【制作事例】松本市 伝統野菜レシピ集~コンセプトメイクを面白がる~
目次
コンセプトとは…
「コンセプト」って一体、何だろう。
よく聞く言葉ではあるけれど、って方もおられるでしょうか。
辞書によると、
2 創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。
出典:コトバンク
とのこと。
コンセプトの出番は多岐にわたります。
- 商品コンセプト
- サービスコンセプト
- ブランドコンセプト
- 事業コンセプト
- 店舗コンセプト
- 企画コンセプト
- デザインコンセプト…
世の中にあふれる商品・サービス等々、あらゆるものの背景にある、
基本的な考え方であり、方向性を指し示すものといったところ。
今日はある一つのパンフレットを作る際の
そのコンセプトメイクから成果物ができあがるまでの、
デザインの軌跡を一例としてここに記そうと思います。
(ここからは、プロジェクトX 的 ナレーションを重ねて想像しながらお読みくださいm(__)m)
コンセプトメイクを面白がる~伝統野菜と共にある暮らし~
はじまりは一本の電話だった
2018年の年の瀬押し迫るある日のこと。
松本市の農政担当の方から、あやこに一本の電話が入った。
その電話口で、一つのテーマが彼女に与えられた。
そのテーマとは、「松本地域の『信州の伝統野菜』を紹介するレシピ集をつくる」だ。
そのレシピ集は、
3月中旬までに印刷物としてできあがり、配布するということが決まっていた。
また、どんな野菜を取り上げるか、またレシピを提供してくれる方がいるということは、
決まっていたが、その先はまっさらの状態だった。
納期はもう動かない。
内容については、
30代~40代の女性に興味をもって手に取ってもらえ、
家族で松本地域の伝統野菜を使って料理を楽しめるパンフレットにしたい
という、担当者からの大枠の希望はあった。
「それ以降の内容はある程度、もみじさんの自由に企画してください。形もお任せします。」
と言った担当の方は、昨年、乗鞍BASEのポスター制作時に担当してくださったTさん。
彼女のデザインワークを気にかけてくれる行政マンだ。
しかし、かなり短納期でハードな仕事であることは間違いない。
乗り越えられない課題はやってこない これは私の仕事だ!
「本当にできるだろうか?」と不安が一瞬頭をよぎるが、
それと同時に、
「これは私がやる仕事だ!」
と、お腹の方から何か熱いものがこみあげてくるのを感じた。
次の瞬間、
「是非、やらせてください!」
と答えていた。
そこから、彼女のコンセプトメイクが始まるのであった。
彼女は部屋にこもり、コンセプトメイクに没頭した。
書いて、描いて、書いて、描いて。
しかしご飯を食べることは忘れなかった。
たまの息抜きに散歩も欠かさなかった。
唯一のテレビ鑑賞である、「まんぷく」も毎日見逃さなかった。
そして、にまにまする自分を抑えられなくなる瞬間が、ついにやってきた。
そう。これは、彼女のコンセプトメイクが完成に近づいた合図だ。
ほくほくのコンセプトを携えて、いざプレゼンの時
1月の中旬、企画書とデザイン案を携えて、役所へと足を踏み入れた。
今回想定すべきターゲットが誰なのか、それを具体的なペルソナ像として提案した。
年末にあやこが鑑賞した映画『ボヘミアンラプソディー』の影響が色濃く出ている。
ペルソナの名前は「松永マキコ」
「松」本に「永」遠に フレディー「マーキ」ュリーの魂が轟かんことを!!
という彼女なりの洒落だ。
説明しなければ、誰にも分からない。
いや、それでいいのだ。
コンセプトメイクは、面白がってなんぼである。
そして、デザインソースは日常に転がっている。
どんな経験も、デザインの素材になりうることを知っている。
そして、肝心のコンセプトだ。
あやこが提案したコンセプトは「伝統野菜のある暮らし」
レシピ集なのに暮らし?
そう。これはレシピ集でありながら、暮らし方の提案なのだ。
企画書に記したコンセプト案をここに転載する。
でもここに住んでいると、その恵まれた環境が当たり前すぎて、
なかなかその魅力や価値に気づけないまま台所に立っている人は多いのではないでしょうか。
・
さらに、「信州の伝統野菜」と言われても、その価値だけでなく、
調理法が分からず、購入して使ってみようという気持ちになかなか結びつかず、
自分の事としてとらえ難い状況があると思われます。
ターゲットとして想定したマキコもその一人です。
・
仕事・子どもや夫のこと・料理も含めた家事…マンネリ化した日常の中で、
ターゲットの彼女が求めているのは、日常を彩るスパイスのようなもの。
実は「伝統野菜」はそのスパイスになり得るし、
日常に風穴を開け、新しい風が通り抜けるきっかけにもなるかもしれない…
そんな期待感・ワクワク感を伝統野菜にもつことができるようなレシピ集を目指します。
・
そこで、本レシピ集は「伝統野菜のある暮らし」というささかな提案を
掲げてみることにしました。
単なる伝統野菜のレシピ提案にとどまらず、
伝統野菜の魅力を知って、この地域で、この環境をいかし、
昔から大事に育てられてきた野菜を手に取り、
それらを取り入れた暮らしの先にはどんな未来があるのか…
それを伝えられるレシピ集になるようにとデザインしました。
・
そのためにも、まず手に取り、知ってもらい、
印象に残るようなビジュアルや紙面構成になっています。
(和を感じてもらえる筆タッチのイラストと、メリハリの効いた色使い、
レイアウト、かわいいだけではないパンチの効いた雰囲気=ロックな雰囲気)
・
また、手に取って終わり・知って終わり・感じて終わりではなく、
実際に作ってみたいと思えるよう、
料理ごとに実際に作っているシチュエーションを思い浮かべられるコピーを入れることで、
より臨場感が増し、一つ一つの料理を読者にひきつけられるようにしました。
・
本レシピ集が掲げる「伝統野菜のある暮らし」の先にある未来とは…
この地域で食生活を営めることの楽しさをまず自分が感じ、
それが家族へと伝わっていき、
自分と自分の身の回りの人たちの心と体が元気になること。
ささやかだけれども、そんな幸せを実感できる家族との未来を想像しながら、
この松本地域で暮らす日々を(ロックに)楽しめる家族が増えますように
という願いをこめたデザインになっています。
パンフレットの形はA6で手に取りやすいサイズ。
蛇腹状に開いて見ることができ、調理時にも邪魔にならない。
パンフレットを配布するイベント時にも持って帰りやすいよう狙いを定めた。
また、松本市内の中学生に配布予定が決まっていたため、
簡単にお母さん達…いや、マキコ達に「ゴミ箱にポイ!」っとされない色合いやテイスト、形状を考えた。
彼女がこのコンセプトを提案したところ、担当のTさんがものすごく喜んでくれたのが分かった。
なぜなら、彼もまた、ボヘミアンラプソディーを最近見たばかりで、
しかもQUEENファンだったからだ。
打合せ時にQUEENばなしに花が咲く。
それはあやこにとって、嬉しい誤算だった。
そしてその後、デザインの細かい調整や詰めが行われ、
印刷へと工程が進んでいった。
ついに出来上がった松本地域の伝統野菜 レシピ集「伝統野菜のある暮らし」
そしてできあがったレシピ集がこちらだ。
発色も悪くない。サイズ感も狙った雰囲気も思った通り。
担当のTさんからも、喜びの手紙があやこの元へ届いた。
しかし、
気がかりなことが一つあった。
このレシピ集で紹介された野菜は、発行された今(2019年3月)、収穫期ではない。
そのため、すぐにこのレシピを活用できるわけではないのだ。
夏から秋にかけ、松本地域の伝統野菜が収穫期になるまで、
このレシピ集が松本市内のマキコ達の手元にスタンバイされ続けることを期待するしかない。
いや、きっと大丈夫。このコンセプトは一時で色あせるものではないはずだ。
そう願いながら、また新たなデザインワークに着手するあやこであった。。。
完。
追伸
いかがでしたでしょうか。
今回、コンセプトメイクからデザインに落とし込む一連の流れを
一つの例としてここに記してみました。
何か商品・サービスをPRしたり、地域資源をPRするために
パンフレット等をお作りになりたい広報担当者様へ。
今回のこのパンフレット制作は、担当者様のご配慮で、素材集めがスムーズだったため
短納期でも、お約束の期日までにスムーズに成果物へ仕上げることができました。
しかし、納期や内容によっては、お受けできないこともありますし、
とりあえず作ればいい的なご発注は承りかねます。
良き未来をみすえ、魂のこもったコンセプト立案から、デザインのご提案をお求めの方へ、
もみじあやこは力を尽くします。
このブログを書いた人

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デザイナー歴15年。広告・広報物のデザインやWEB制作等の仕事のなかで、短期的な集客はできても、長期的な集客に苦戦するクライアント様をまのあたりに。
マーケティングの必要性を実感し、自ら実践。クライアント様お一人お一人が、自分らしさをいかしながら、自然と集客につなげられる、そんなデザインやWEBサイトの構築をサービス提供している。事業を営むお一人お一人がご自身のなかにある本当の想いや理想を明確な言葉にし、そこに近づいていくきっかけになること。そして、個々のオリジナルな力を活かしあい、より良き未来へとつながる世の中を実現する一助になることを目指して、信州・乗鞍高原を拠点に活動中。
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